営業は提案書、管理部門は社内文書、顧客対応部門は回答の下書き。各部署からAIを使いたいという要望が出ても、順番や判断役が決まらなければ、個別の試行だけが増えてしまいます。
複数部署のAI推進では、対象業務を絞り、部署ごとの担当者と全体の判断役を置いたうえで、共通ルールと評価方法を揃えます。人や時間を確保できない段階なら、一つの業務から始める方が進めやすくなります。
この記事では、複数部署を同時に進めてよい条件と、外部支援を頼む前に決めたい範囲・役割・費用を整理します。
複数部署で同時に始めてよいか、四つの条件で確かめる
部署数だけで支援プランを選ばず、次の条件を確認してください。
- 各部署に、業務を説明し、試した結果を返せる担当者がいる
- 担当者が、試行・記録・手順の見直しに使う時間を確保できる
- 予算、着手順、情報の扱いを決める社内の判断役がいる
- 対象業務について、完成物と品質を確認する人が決まっている
担当者は兼任でも構いません。ただし「空いた時間に試す」だけでは、通常業務が忙しい週に止まります。上司と相談し、試行する時間と、結果を共有する場を予定に入れます。
一人の兼任担当者が全部署の試行まで引き受ける場合や、承認する人が決まらない場合は、同時着手を見送ります。まず一部署で進め方を確かめ、担当者と手順が揃った段階で広げる判断も有効です。
対象業務は、効果だけでなく「今、試せるか」で選ぶ
各部署の要望を同じ一覧に載せ、業務名、担当者、実施頻度、現在の作業時間、利用する情報、確認方法、他部署への依存を書きます。期待する削減時間が大きくても、使える資料や確認者がない業務は、すぐには着手できません。
最初の候補には、繰り返し発生し、完成物を人が確認でき、問題が起きたら従来の方法に戻せる業務が向いています。共通の担当者に負荷が集中する候補は、時期をずらします。
たとえば、次は架空の会社での着手例です。実際の導入実績を示すものではありません。
- 営業:利用を許可された商談メモから、社内報告の下書きを作る
- 管理:承認済みの社内文書から、案内文の下書きを作る
- 顧客対応:承認済みFAQを参照し、担当者が確認する返信案を作る
この場合も、三つすべてを同じ日に開始する必要はありません。営業の試行環境が先に整えば、そこで記録方法を確かめながら、他部署は資料の準備を進められます。
全体の判断役と、現場で試す人を分ける
部署をまたぐ案件では、「誰に聞けば決まるか」が曖昧になりがちです。最低限、次の役割と相談先を記録します。
- 経営・判断役:予算、優先順位、継続・停止を決める
- 各部署の担当者:現状を説明し、試行と作業時間の記録を行う
- 業務の確認者:出力の品質と、その業務で使ってよいかを判断する
- 情報管理の担当者:入力する資料、権限、保存先の条件を確認する
- 外部支援者:候補と進行の整理、手順づくり、改善案の提示を支援する
小規模な会社では兼務もできますが、外部支援者だけで、社内の予算や情報利用の判断を完結させないことが大切です。
NISTのAIリスク管理フレームワーク1.0でも、役割・責任・連絡経路を明確にすることと、AIに関するリスク判断を経営層が担うことが示されています。上記の役割分担は、その考え方を業務に落とし込むための一例です。
共通ルールは揃え、完成物の基準は業務ごとに決める
全社で揃えたいのは、利用を許可するサービス、入力してよい情報、アカウント管理、問題が起きたときの相談先です。一方、営業報告と顧客への返信では、確認項目も、誤りが与える影響も違います。
共通ルールに加えて、業務別の手順書に「使う資料」「完成物」「人が確認する箇所」「使わずに差し戻す条件」を残します。別部署の成功例を展開するときも、その部署の資料と権限で改めて確かめます。
たとえば営業報告では、決定事項と未確定事項の区別が重要です。顧客向けの返信では、金額、契約条件、対応期限を担当者が確認し、承認前に送信しない手順が必要になります。
成功・改善・停止の条件を、試す前に置く
「使った人が増えた」だけでは、業務に定着したかを判断できません。各業務について、品質、負担、継続運用の三つを確認します。
品質は担当者が判定できる条件にする
品質は、必要な項目が揃っているか、元資料にない事実を付け足していないかなど、業務の確認者が判定できる形にします。重大な誤りが残る結果を、時間短縮で埋め合わせて合格にしないようにします。
他部署の確認負担まで含めて測る
負担は、入力の準備から確認・修正、保存や引き継ぎまでを含めて比べます。営業の作業が減った分、管理部門の確認が増えるなら、その時間も合わせて確認してください。同じ削減時間を両部署で重複して計上しないことも大切です。
通常の担当者で続けられるかを確かめる
継続運用は、通常の担当者が手順を再現できるか、不明点の相談先が機能するか、手順の更新担当者がいるかを見ます。詳しい社員が毎回付き添わないと使えない状態は、改善を続ける対象です。
試行後は、条件を満たせば継続、品質や負担に課題があれば修正して再試行、情報の扱いや確認体制が整わなければ保留とします。停止した場合も、理由と再開条件を残せば、同じ検証のやり直しを減らせます。
週次は停滞の解消、月次は続けるかの判断に使う
定例会議では、各部署の活動報告だけで終わらせず、「何が止まっているか」「誰がいつまでに判断するか」を確認します。資料の使用許可待ち、現場の試行時間不足、確認者の不在などは、原因ごとに対応が変わります。
月次では、業務ごとの品質、利用状況、実際の負担、追加費用を並べ、対象を続けるか、直すか、入れ替えるかを決めます。共通設定や実践会にかかった時間も記録し、三部署の成果を単純に足しただけの報告にしないようにします。
新しい部署に広げる前には、既存業務の担当者が自分たちで運用を続けられるかを確認します。支援する案件を増やすときは、既存業務の相談や手順更新も残るためです。
全社推進の費用と、月額に含まれる範囲
AiPHAのAI顧問では、社内担当者への相談支援はライト月額5万円、一部署・重点業務同時一件の導入と定着支援はスタンダード月額10万円、複数部署を同時に進める全社推進は月額30万円です。いずれも税別・初期費用なし・最低契約期間6ヶ月で、外部AIツールの利用料は別途必要です。
全社推進は、合意した3部署・重点業務を同時に3件までが対象です。週1回の定例、指示文・手順書の新規作成は月2本、対象部署向けの操作説明・実践会は月1回。軽微な設定・実装を含み、大規模な開発は別見積りです。6ヶ月の顧問料は180万円・税別となります。
予算を考える際は、顧問料にツール利用料、各部署の試行・確認時間、必要な追加開発費を加えます。手順書の本数は業務の完成件数を保証するものではなく、全社員が一定期間で使えるようになることを約束するプランでもありません。料金と条件は2026年10月7日確認時点です。
全社推進が合う会社と、先に一業務から始めたい会社
全社推進が合うのは、各部署に試す人と時間があり、複数の要望を整理し、全体の進行と判断材料をまとめる支援が必要な会社です。
一方、社内の担当者が業務整理や設定を進められ、相談先だけが必要ならライトが候補になります。試す業務や進め方がまだ定まらない場合は、スタンダードで一つの業務から取り組む方法があります。
日々の業務をすべて代行してほしい場合や、大規模なシステム開発だけが目的の場合は、月額の全社推進だけで足りるとは限りません。また、各部署から担当者を出せない、入力情報の利用許可が取れない、品質を判断できる人がいない場合は、その条件の整理を先に進めます。
複数部署で進める範囲を、無料相談で整理する
まずは、AIを使いたい部署、候補の業務、現場で試せる担当者の有無を整理してみてください。詳しい仕様書がなくても、今どこで止まっているかが分かると、必要な支援を検討しやすくなります。
AiPHAの無料相談はオンライン30分です。複数部署を同時に進めるか、一つの業務で条件を確かめるか。現在の体制と課題をもとに、最初に取り組む範囲を一緒に整理します。
