社内マニュアルを生成AIに読み込ませた後、「回答は自然なのに、案内された手順が古い」と気づくことがあります。指示文を直す前に、AIが参照する資料の置き方と更新手順を見直したい場面です。
たとえば、申請先を変更したのに、以前の説明資料と新しい手順書が同じ参照範囲に残っている場合。これは説明のための仮例ですが、人が見ても迷う資料群から、AIだけが正しい版を選び続ける前提にはできません。
今回は、回答の採点方法ではなく、社内知識を「登録する・見直す・参照対象から外す」運用を整理します。
古い日付だけで、資料を除外しない
数年前の規程でも現在有効なものはあります。一方、昨日作った議事録でも、決定前の案が書かれていれば正式な案内には使えません。ファイルの更新日時と、内容が有効であることを分けて考えます。
Microsoftの公式ガイダンスでも、正式な情報の集約、版管理、見直し方針、古い資料や重複資料の整理を扱っています。以下は、この考え方を小さなチームで実行するための運用案です。特定製品の導入や自動化を前提にしていません。
準備:正本と管理台帳を決める
最初から全社の共有フォルダを整理せず、問い合わせの多い一つのテーマに絞ります。たとえば備品申請なら、その説明に必要な資料だけを集めます。
「正本」は、社内で正式な根拠として扱う資料です。担当部署が正本の所在を決め、台帳には次の項目を残します。
- 資料名と正本のURL
- 対象となる部署・業務
- 適用開始日と、終了日がある場合はその日付
- 最終確認日と次回の見直し期限
- 内容を更新する担当者と、承認する人
- 状態(有効・確認待ち・廃止)
- AIの参照先、登録した版、反映を確認した日
見直し期限は「この日までに内容を再確認する」という管理上の期限です。規程そのものの失効日とは別に記録します。期限を過ぎた資料を自動で削除するのではなく、確認できるまでAIの参照を止めるか、担当部署への案内に切り替えるかを先に決めます。
更新を、三つの作業に分ける
1.資料の内容を確定する
更新担当者が変更点と適用日を記し、承認者が確認します。新しい制度の開始前に資料を用意する場合は、「公開済みだから今日から適用」と誤解されないよう、現行版と開始予定の版を区別します。
承認者が不在なら、誰が代わりに判断するかも決めます。AI利用の担当者に、社内規程の内容を変更する権限まで渡す必要はありません。
2.AIが参照する版を切り替える
内容の承認と、AIへの反映は別の作業です。手動でファイルを登録しているのか、共有場所と連携しているのかを確認し、現在の方式に合う差し替え手順を用意します。
正本を更新しただけで作業完了にせず、AI側で参照できる版を確かめます。モデルやAIアプリの更新も、社内資料の改訂とは別です。資料を承認する人と、参照設定を操作する人を台帳上で分けておくと、確認先が曖昧になりません。
3.旧版を通常の参照範囲から外す
旧版は、過去の経緯を調べるために残す場合があります。保管することと、現在の業務案内に使わせることを分けましょう。
保存方針に従って旧版を保管し、通常のAI参照先から外せたことを確認します。「旧版」という名前を付けるだけで除外できると考えず、参照設定と実際の挙動を確認してください。過去時点の質問にも答えさせたい場合は、現行案内とは対象範囲を分けて設計します。
判断基準:迷った資料を、そのまま追加しない
資料を登録するときは、次の三段階で判断できます。
- 登録できる:正本、適用対象、現在の有効性、担当者が確認できる。
- 確認してから登録する:記載が食い違う、承認記録がない、対象部署が不明である。
- 通常の参照から外す:廃止済み、下書き、同じ内容の不要な複製である。
複数部署で内容が違う場合、どちらかを一律に消すのではなく、適用対象を明示します。正本が決められない状態では、全資料を追加してAIに選ばせるより、そのテーマを対象外にして担当部署へつなぐほうが運用を管理しやすくなります。
成功条件は、次の改訂でも手順が回ること
初回の整理だけで終わらせず、一度の改訂を最後まで試します。仮の備品申請マニュアルなら、申請先を変更したテスト用資料で切り替えを確認できます。実際の制度を勝手に変更して試す必要はありません。
確認するのは、承認した版が参照されること、旧版が現行手順として案内されないこと、確認待ちの資料を保留できることです。さらに、更新担当者が不在でも代替者が手順をたどれる状態を目指します。
一回の回答が正しいだけでは、運用全体の正確さを保証できません。台帳と確認記録を残し、次の見直しで同じ手順を再現できることを、小さな運用の完了条件にします。
費用と、AI顧問が向かないケース
まず見積もりたいのは、資料の確認、部署間の食い違いの解消、登録後の確認に必要な社内工数です。資料を増やすほど管理対象も増えるため、最初の範囲を狭くすることが負担の見通しにつながります。
AiPHAのAI顧問は、ライト月額5万円、スタンダード月額10万円、全社推進月額30万円です。いずれも税別・初期費用なし・最低契約期間6ヶ月で、外部AIツールの利用料は別途です。
ライトは社内担当者への助言・確認が中心です。スタンダードは1部署・重点業務を同時に1件として、業務の聞き取りや指示文・手順書の作成、試行後の改善を支援します。全社推進は合意した3部署・重点業務を同時に3件までが対象です。
基本設定や日々の運用、アカウント・権限管理は御社が主体です。全社推進では軽微な設定・実装を含みますが、それを超える個別の設計・開発は別枠で見積もります。社内資料を自動同期する仕組みも、必要な範囲を確認してから判断します。
社内で資料の正しさを判断する人を置けない場合や、資料更新を含む日々の業務を丸ごと代行してほしい場合は、顧問契約だけでは要望に合いません。まず責任者と運用範囲を決める必要があります。
「何を正本にするか決まっていない」という段階でも、困っているテーマと資料の種類を整理するところから始められます。無料相談で、社内資料の管理とAI活用の進め方を相談する。
